伊勢湾台風メモリーズ2009

伊勢湾台風上陸から50周年を迎える2009年。これを記念して、日本の台風災害史上最大の被害を引き起こした50年前の伊勢湾台風を振り返ります。この台風では観測史上最大級の高潮が多くの人々の命を奪いました。会場ではこの高潮を実測データに基づきプロジェクションマッピングで再現し、高潮の怖さを改めて考えてみたいと思います。

バーチャル版

伊勢湾台風メモリーズ2009 - バーチャル版がオープンしました。ぜひお試しください。

イベント報告

東京会場(終了)

名古屋会場(終了)

イベントの記録動画

YouTube: DigitalTyphoonTVさんのチャンネル

発表文献

イベントに関するブログ記事

協力

助成

放送文化基金
台風メモリーズ:データ体感空間を用いた参加型災害記憶共有システムの構築
情報・システム研究機構 新領域融合研究センター
地球環境データの情報空間統合に基づく横断型情報基盤とポータルサイトの構築

連携

伊勢湾台風50年事業 イベント情報サイト

資料・音声提供

謝辞

緯度・経度から住所を取得するためにGoogle Maps APIを利用しています。

メンバー

企画(コンセプト)・運営(データベース+ウェブ)
北本 朝展(情報・システム研究機構 国立情報学研究所)
共同研究者(コンセプト・映像手法開発)
近清 武(日本科学未来館
インスタレーション制作
D&E lab.

関連サイト

「台風メモリーズ」とは?

「台風メモリーズ」プロジェクトで目指すところをコンセプトにまとめました。また今回のイベントについては、ブログ記事にもまとめました。

なお過去のイベントに関しましては、2009年3月29日に開催したイベントの模様をご覧下さい。

1959-2009

「台風メモリーズ」は2009年に始動します。この年は、日本の台風災害史においては、実は節目の年でもあります。というのも、ちょうど50年前の1959年に来襲した台風195915号、後に「伊勢湾台風」と命名された台風が、日本の台風災害史における一大転機となったからです。

第二次大戦で国土が荒廃した日本は、戦後の経済発展によって復興が進んでいたにもかかわらず、防災基盤の整備にまでは手が回らなかったため、大きな台風が上陸するたびに1000人単位の死者を記録していました(参照)。そんな中で1959年に紀伊半島に上陸した伊勢湾台風は、その強大な勢力と最悪のコースによって伊勢湾沿岸を中心に史上最大級の高潮を発生させ、5,000人を越す死者・行方不明者という、記録が残る中では台風災害史上最大の被害を引き起こしました。

相次ぐ大規模災害に危機感を強めた政府は、体系的な防災体制の構築が必要として、日本の防災対策の基本を定めた「災害対策基本法」を昭和36年(1961年)に制定し、全国の防災基盤の強化に踏み出すことになります。今日まで営々と続く現代の防災対策の原点は、まさに伊勢湾台風にあったのです。その後、阪神・淡路大震災による防災対策の見直しを経て、今はまさにこの50年間の歩みを検証するいい機会と言えるでしょう。

一方で災害から50年を経て、災害の記憶の風化も進んでいます。当時20歳だった人も今では70歳。記憶を後世に伝えるにはそろそろ限界が近付いています。こうした過去の災害に関する記憶を集めるということには、50年間の貴重な体験を受け継いでいくという意義もあります。

関連サイト

「台風メモリーズ」はデジタル台風プロジェクトの一部に位置付けられるものです。「デジタル台風」は台風に関する科学的データを網羅的に収集した科学データベースであり、過去約30年分の気象衛星画像やアメダスデータなどを自在に検索できます。これらのデータを「台風メモリーズ」のリアル空間に投影することで、台風の記憶を科学的データから想起するための環境を構成します。

その一方で「台風メモリーズ」は台風前線などの参加型台風情報プロジェクト(ソーシャル台風)の特徴も受け継いでいます。台風に関する個人的な情報を自発的な参加者から収集し、それをウェブサイトで社会的に共有するという方法論の面では、「台風メモリーズ」は一連の参加型情報システムの試みの一つとして位置付けられるものです。

「台風メモリーズ」と「台風前線」を比べると、後者は現在発生中の台風に関する新鮮な情報を収集するのに対して、前者は過去の台風に関する記憶を収集するという点で異なります。また「台風メモリーズ」はリアル空間に飛び出しており、この点でもウェブ上で完結する他のシステムとは違っています。ただし、両者には共通点もあります。それはメディアアート的な発想です。データを1)美しく、2)新しい視点から表現する、3)作品を制作する、という方針に基づき、研究(技術)とアートの境界を探究しています。